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2010年10月20日

福岡地区建築工事業100社の決算分析より4

見通し

 「最近では私たちに対する金融機関の融資姿勢が前向きになったような気がします。半年前と比べると大きく変わりました」

 これは今春、あるマンションデベロッパーとの会話の中の一部である。実際に不動産バブル崩壊前後より新規のマンション分譲を抑制してきたデベロッパーの新規物件への着手や計画も聞かれるようになった。値引きや各種サービスなどを活用した各社の取り組みもあって完成在庫が大幅に減少したことも大きな要因であるが、資金調達面での課題のクリアもあるようだ。さらに企業により格差は大きいものの各専門下請け工事企業からも工事量の増加や受注予定物件の増加、見積もり依頼の増加なども聞かれるようになった。

 また、本誌「スペシャル対談」の中でも話題となるとともに「改修・リフォーム特集」としてまとめたが、多くの企業が力を入れているのがマンションやビルなどの「大規模改修工事」そして「リフォーム工事」である。

 一言に「大規模改修工事」といっても外壁や屋上の防水工事から耐震補強工事、給排水管工事、全国的にみるとオール電化やエレベーターの増設などの改良を加えるマンションもあるようだ。マンションを適正に維持し快適な居住と有効な資産価値の維持には防水工事をはじめとした改修工事は不可欠である。また、給排水管工事については、一般的なマンションの排水管には硬質塩ビライニング鋼管が使用されているが、鋼管内にライニングされている硬質塩ビが年月とともに劣化し鋼管内にサビなどが発生、25年から30年程度での修繕が必要ともいわれており、この時期に差し掛かっているマンションも多く見られる。

 前述の通り環境的には今後への期待要素も出てきている。また、これまで培ってきた技術力やノウハウを生かし、マンションやビルなどの大規模改修工事に意欲的な姿勢を見せる企業も多く見られるようになった。ただし、いまだ受注環境に本格的な力強さは感じられないと共に流動的な一面もある。今回の対象となった企業の中にも資金面に不安を抱える企業や技術面などに賛否両論ある企業も見られる。これまでの実績から施主との信頼関係ができている企業とそうでない企業、資金力を有する企業とそうでない企業、自社の特色を理解し生かすことができる企業とそうでない企業、生き残りをかけた戦いはさらに本格化するものと見られる。

 各社の過去3期の業績や財務状況などを取りまとめたデータブックを作成しました。詳細は弊社担当者までお問い合わせください。


※対象決算は2009年4月期から2010年3月期
※対象エリアは福岡県福岡市、糸島市、大野城市、春日市、太宰府市、筑紫野市、古賀市、福津市、宗像市、筑紫郡、糟屋郡
※ランキングは土木工事などの各種工事や兼業を含んだ総売上高をもとに算出

2010年10月19日

福岡地区建築工事業100社の決算分析より3

売上高別分布

 2009年度の上位100社の売上高区分は100億円以上は2008年度の8社より半減し4社、50億円以上100億円未満が同数の9社、10億円以上50億円未満が2社増の34社、5億円以上10億円未満が5社減の28社、5億円未満が7社増の25社となっており、売上高別の分布でみても厳しい状況がうかがえる。なお、ランクイン企業の最下位となる100位の売上高は2008年度は3億2,452万円であったが、2009年度は2億7,569万円となった。


収益状況

 本業での利益率を表す営業利益率は2009年度も1.9%で、2008年度と同率となった。ただし、金額ベースでは売り上げ自体の落ち込みの影響もあって平均で2008年度の5,184万円より4,429万円に減少した。

 金利関係をはじめとした営業外利益および費用計上後の平均経常利益額は、2008年度の5,476万円より4,035万円に減少した。また経常利益率も2008年度の2.0%より0.3ポイントダウンの1.7%となった。

 また、平均当期利益額についても2008年度は800万円にとどまっていたが、2009年度は264万円とさらに減少、当期利益率も2008年度の0.3%より0.2ポイントダウンし0.1%にとどまった。営業利益および経常利益と当期利益に大きな差が見られるが、要因としては特別損失および納税の影響などがあげられる。

 2008年度はトップの九鉄工業(株)(福岡市博多区)の赤字などが大きく影響していたが、2009年度については九州建設(株)(福岡市博多区、5位)が11億円超の赤字となっており、全体を大きく押し下げる要因の一つとなった。

 なお、金額ベースでは営業段階および経常段階では上村建設(株)(福岡市博多区、2位)がトップ、九鉄工業(株)(福岡市博多区、1位)が続いており、両社が共に10億円超の黒字を確保した。また、当期利益については九鉄工業(株)が8億5,751万円でトップとなり、上村建設(株)が6億971万円と続き、共に単独で100社合計の当期利益額を上回る形となっている。


借入状況

 近年は各企業共に不良資産の売却などを積極的に進め借入金の圧縮や財務面の改善を進めてきているが、この流れは2009年度も続き100社合計の借入額は439億9,300万円で、2008年度の479億544万円より39億1243万円の減少となった。なお、借入ゼロ企業、いわゆる無借金企業は(株)北洋建設(福岡市南区、3位)および西鉄建設(株)(福岡市中央区、12位)など14社あったが、2008年度に比べると3社の減少となっている。


従業員状況

 2009年度の100社合計の従業員数は3,333人となり、2008年度の3,461人より128人(3.7%)の減少となった。近年、各企業は売上高の減少や採算性の悪化などから人員の削減をはじめとした諸経費の圧縮に取り組んできており、結果的に人員の減少に至っている。

 企業の労働生産性を表す従業員1人当たりの売上高は2008年度の7,843万円に対し2009年度は7,183万円に減少しており、人員削減分以上に売上高が落ち込んだ形となっている。

2010年10月18日

福岡地区建築工事業100社の決算分析より2

上位10社のランキング動向

 2009年度の集計で新たにトップ10入りしたのは、9位の(株)サン・ライフ(福岡市博多区、2008年度は12位)および10位の(株)未来図建設(福岡市南区、2008年度は11位)の2社であるが、共に売上高は2008年度を下回っている。逆に2008年度のトップ10より後退したのは11位の(株)澄男工業(福岡市西区、2008年度9位)および34位の起産建設(株)(福岡市博多区、2008年度は10位)の2社である。また、2009年度のトップ10企業のうち、2008年度より売上高が増加したのは1位の九鉄工業(株)(福岡市博多区)および3位の(株)北洋建設(福岡市南区)の2社のみで、残りの8社は2008年度比で減収となっている。九鉄工業(株)の増収の要因は前述の通りであるが、(株)北洋建設については、当地区では他社に先駆けマンションなどの改修工事に積極的に取り組んだことも大きく寄与しているものと見られる【表1】。なお、11位から30位までのランキングは【表2】の通りとなっている。

【表1】【表2】

2010年10月15日

福岡地区建築工事業100社の決算分析より1

工事中のマンション 2009年度(対象・2009年4月期―2010年3月期決算)の福岡地区建築工事業100社の総売上高は2,394億3,669万円となり、2008年度の2,714億7,269万円より320億3,600万円(11.8%)の減少となった。また、昨年に続きトップとなった九鉄工業(株)がJR博多駅などの九州新幹線がらみの工事需要により、前年度比106億円超の増収となったことが全体の落ち込みをカバーしている一面もあり、同社を除いた99社の合計でみると2008年度比426億5,765万円(17.4%)の減となった。

 2007年度までは外資や中央資本を巻き込んだ福岡市中央区の『天神地区』や同博多区の『博多駅周辺』などの不動産バブル、および分譲マンションの建設ラッシュにも支えられ受注面は比較的活発に推移した。ただし、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した米国発の金融危機が世界を席巻し、わが国の不動産バブルも終焉を迎えることとなった。金融機関の不動産融資に対する審査厳格化や、所得問題による消費マインドの低下など不動産業界の低迷が一気に表面化して近年の建築市場を支えてきた不動産業界の環境が悪化したことから、建築業界にも多大なる影響を与えることとなった。2008年度分の集計時まではこの環境悪化前に既に決算を終えていた企業や、それ以前の受注に支えられ決算を終えた企業も多く、2007年度比で1.9%減にとどまった。ただし、2008年度の集計時にも「今回の危機の影響が出るのは2009年度以降」と提言していたが、実際に2009年度は100社合計の売上高は大幅に落ち込むこととなった。