福岡流通大戦争は百貨店業界再々編の幕開けか12
いずれにしても、福岡地区は百貨店再々編の舞台となり、ここでの勝ち組が九州の各百貨店を傘下に置くことも考えられる。福岡はアジアに開かれた都市であり九州の“首都”でもある。11年以降アジア経済も復活してくるであろうと言われる中、福岡での勝ち組店舗は、中国マーケットを狙ったアジア出店戦略の拠点となるであろう。
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いずれにしても、福岡地区は百貨店再々編の舞台となり、ここでの勝ち組が九州の各百貨店を傘下に置くことも考えられる。福岡はアジアに開かれた都市であり九州の“首都”でもある。11年以降アジア経済も復活してくるであろうと言われる中、福岡での勝ち組店舗は、中国マーケットを狙ったアジア出店戦略の拠点となるであろう。
第三は消費低迷の中「外商部の改革」である。テリトリーの変更や、既存顧客を上位顧客へ育てるなどといった、今までの手法ではなく、店全体が800億円体制を確立するために、「外商はどうすべきか」ということである。要は、同業他店とは違う土俵で戦う戦略構築でもある。三越福岡店は、家庭外商にウエートを置き、来店促進型へシフトし、おもてなしソフトを構築し成功している。岩田屋は法人、家庭の全方位的な外商活動で福岡市内最強である。両店の隙間を狙うなら、例えば、宝飾、美術等の高額品を富裕層の既存顧客に販売しても売れなくなっているので、まずは、「新規外商顧客を開拓」する政策へ変更することも考えられる。このためには、消費低迷でも他の商品群より比較的強い食品から家庭へ入り、ファッション・特選品を販売するスタイルへ変更する必要があるのではないだろうか。少なくとも2年くらいをかけて現在の高齢化した顧客から30歳代後半~50歳代の富裕層顧客開拓にウエートを置く必要があると思われる。三越福岡店は出店時に外商部をつくらず、開店数年後に売上高確保からつくった経緯がある。一方、博多阪急はターミナル店とはいえ、外商に強い高島屋との経営統合や博多大丸出身の元外商経験常務が開設準備室特別顧問に就任したこともあり、外商部は開店前につくってくる可能性が極めて高い。
このために第一には「カード戦略の再構築」が重要である。福岡市内百貨店の中でお買い上げ額に付き一番低い1%(ポイント)を同業他店並みにできるかどうかである。経費もかなり削減したと思われる中、例えば三越福岡店外商部が博多大丸の顧客開発部を真似てつくったスマイル組織(女性部隊による家庭訪問)を08年春に解体したように、「社内全体の組織」を見直し、費用対効果を考えた抜本的改革が必要と感じる。
第二は、「人材を活用した組織内の権限委譲」である。例えば、本社仕入れも重要であるが、もっとローカル色を出した地方店独自の品揃えの強化である。今まで取り扱っていた商品を見直して品質を落とさず、思い切った価格訴求・価値訴求ができるように、仕組みを変えた組織内の権限委譲である。
また、同じ傘下で天神に2店舗あり経営効率からどちらかの店舗へ集約し面積を拡大しても良いのではという声も一部にはある。しかし、増床となれば最低5万平方メートル以上が必要だ。現在の三越福岡店は3万8000平方メートルのため、ソラリアステージ側への増床交渉や、外商部と後方部門が入居する隣接ビルへの増床も考えられる。岩田屋が隣接するNTT福岡支店敷地内への増床の可能性もあるが、ターミナル性を考慮すれば、現三越福岡店を増床し「三越岩田屋店」とした方が良さそうだ。しかし、当面は合併せず、両店がお互いに競い合いながら独自の販促策を打ち出し、マーケットシェア拡大を狙ってくるであろう。
博多大丸は08年春に約40億円を投資してリニューアルしたものの、消費低迷により苦戦している。しかし、リニューアルしなければ、大幅に対前年比マイナス店となりマーケットは三越福岡店・岩田屋に奪われていただろう。博多大丸は、カード会員数とミセスの顧客に強い地盤を持っている。今後は、売上高800億円(08年度見通し740億円)を目指せるかどうかがカギを握る。マーケットが限られる中、同業他店からのシェアアップである。
一方、岩田屋はファッションに強いと言われるが、10年秋に旧岩田屋本館跡にパルコが出店(延べ床面積2万4000平方メートル)すると、その座は奪われかねない。パルコは若者向けファッションが得意分野で、福岡パルコは池袋や名古屋などと並ぶ基幹店に位置づけられている。更には、本体の伊勢丹が今期低迷している。各百貨店は伊勢丹を勉強し、伊勢丹のノウハウを吸収しようと動いてきた。このため流通業界は伊勢丹から人材をスカウトしてきたが、小田急百貨店の3人の役員は08年退任、ミレニアムリテイリングのS社長も辞任するなど伊勢丹流はどうもうまくいかなかった感じがする。今や伊勢丹は変調しているように感じる。したがって、岩田屋にとってプラスとなるのかどうか分からない。
また、三越福岡店・岩田屋が早急に解決すべき点が両店のカード戦略の統合である。三越カードは5%値引き、岩田屋はポイント付加とシステムが違うため顧客にとって両店で買い物する場合、利便性に欠けるのが現状だ。このため、博多阪急が出店する1年前までに統合することが重要である。
三越福岡店・岩田屋の両店は、共同販促もまだまだ十分とは言えない。08年春統合記念として両店共同で大きな新聞折り込みチラシを投入し市民の話題となったが、同年秋の「大天神祭」では、不思議なことに三越福岡店、岩田屋とも単独で新聞折り込みチラシを打ち、春とは違う販促となった。おそらく、春の共同チラシの結果、食品に強い三越福岡店に顧客が流れ、岩田屋は販促効果が薄かったのではないかと思われる。また、同年秋に福岡市内ホテルで行われた両店外商部の初めての催事においてエルメスも、三越福岡店の方がメリットがあったのではと思われる。
最近、三越福岡店は販促面で変化を見せ始めている。例えば、コート・ブーツ…など催事の新聞折り込みチラシは、今までに比べればファッション性があり、おしゃれである。店名の色使いも変わってきた。北海道展の催事にしても、話題の品々を揃え美味しそうなチラシの構成であった。更には、同じく秋の男の祭典の催事では、福岡市内百貨店が実施しなかった男性購読中心の地元雑誌へ広告を打つなど販促手法を変え成功したようだ。

福岡地区天神・博多駅の3大百貨店グループ激突にパルコ参入
11年JR博多駅にオープンする「博多阪急」(仮称)は、J・フロントリテイリング傘下の博多大丸と三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越福岡店、岩田屋との激突となるが、知名度を誇る高島屋とファッション・食品で定評のある阪急との組み合わせで強力な店となるであろう。博多駅進出にあたっては、高島屋と阪急は競い合ったライバル同士。駅ビル開発計画の当初から、テナント進出に名乗りを上げた高島屋が最有力と思われたが、店舗面積、賃借料などで折り合わず、06年春に阪急百貨店に決定した経緯がある。高島屋はマネジメントやMD(商品政策)などでは協力してくるだろう。特に店舗面積約4万平方では天神地区百貨店と戦うには手狭なため、高島屋子会社の「東神開発」の力を借りて、周辺地区開発や周辺地区とのネットワークをつくることも考えられる。
福岡市内3百貨店の08年4月から9月までの売上高対前年同月比は、各店とも前年割れが続き苦戦中である。早急にスケジュールを立て具体的な阪急対策を講じた店が勝ち組となるであろう(表2参照)。

百貨店は2大グループに再々編となるのか
全国百貨店売上高は10年間で約2割減少し、07年で約7兆7000億円となった。価格競争力のある専門店等に顧客を奪われているのが現状だ。
08年4月から9月までの3大百貨店グルーブの売上高の対前年同月で比べてみても、J.フロントリテイリングは毎月、対前年比マイナスで苦戦、08年度中間期決算でも減益減収となった。三越伊勢丹ホールディングスもファッションに強い伊勢丹が予想外に対前年同月比マイナス傾向と苦戦している。阪急百貨店はプラス月が他店に比べて多いものの、高島屋、阪神百貨店とも対前年比マイナス傾向となっている(表1参照)。このように、百貨店は消費低迷の中、苦戦を続けているのが実態である。
売上高トップの三越伊勢丹ホールディングスは経営統合後、伊勢丹サイドがかなり強引なやり方で統合を進めているといわれ、「伊勢丹社員がつねに上座にいる感じ」という声が囁かれるほどだ。また伊勢丹社員は「肉食動物」、三越社員は「草食動物」とも噂され、伊勢丹低迷の中、三越にとって伊勢丹と一緒になる意味は薄れているように感じられる。大丸と松坂屋にしても統合後は両店とも苦戦し、売上面で松坂屋が足を引っ張っている状況である。
米国では、1886年頃百貨店グループは11グループであったが80年代末からの景気低迷で8グループに再編された。2005年には、売上高1位のフェデレーテッドが2位のメイを買収しメーシーズが誕生。今や米国百貨店は全米に800店超を展開し売上高3兆円規模のメーシーズ一強体制時代となっている。日本でも、このまま景気低迷による消費不振が続くと米国と同様再々編され、2大グループに集約されるかもしれない。それは、「J・フロントリテイリング」と「ミレニアムリテイリング(そごう・西武)」との経営統合や「高島屋、阪急阪神百貨店」と「三越伊勢丹ホールデイングス」などとの経営統合があるかもしれないが、現在経営統合されている「三越、伊勢丹」や「大丸、松坂屋」が現グループから離脱した後、新しい百貨店グループが誕生したり、他の百貨店グループを傘下にすることも考えられる。
近い将来、「想像もつかない再編劇」となる可能性が高いと思われる。福岡の流通戦争の勝敗は百貨店再々編の幕開けとなるかもしれない。
百貨店業界は再編の嵐
百貨店業界は消費低迷、少子高齢化によるマーケットの縮小などに対応して経営の効率化を図るため、07年に大丸と松坂屋の「J.フロントリテイリング」や、阪急と阪神の「エイチ・ツー・オーリテイリング」、08年には三越と伊勢丹の「三越伊勢丹ホールディングス」といった大型百貨店間の経営統合が相次いだ。また、同年には米国金融危機により景気後退色も強まり個人消費が失速、経営環境の急激な悪化に対応するため百貨店3位の高島屋と阪急阪神百貨店が11年をめどに経営統合することが発表された。
高島屋は、宝飾や美術など高額品販売や富裕層に強く、阪急阪神百貨店はファッションに強い百貨店である。両グループの経営統合により、各百貨店グループと比較しても収益力が高く、財務体質にも比較的余裕があるグループの誕生となる。更には、高島屋は、商業施設の開発で評価が高い子会社を傘下に持ち、電鉄会社の阪急阪神ホールディングスの沿線不動産などを商業開発すれば収益拡大の可能性が高まってくる。
両グループは百貨店業界でも勝ち組同士といわれ、経営統合の相乗効果は他の百貨店の場合と比べてもはるかにメリットがあると思われる。
岩田屋・博多大丸・三越福岡店 VS 博多阪急・パルコ
「高島屋」と「エイチ・ツー・オーリテイリング」傘下の阪急阪神百貨店が2011年をめどに経営統合する。同年はJR博多駅の博多阪急(仮称)開店と重なるため、同店は高島屋のノウハウも加わり強力な店となる。
福岡市天神地区では「J.フロントリテイリング」傘下の博多大丸、「三越伊勢丹ホールディングス」傘下の岩田屋と三越福岡店が営業しており、地方では唯一3大百貨店グループの店舗が激突することとなる。加えて10年秋に旧岩田屋本館跡にパルコが開業する予定であり、福岡は国内有数の流通激戦地となる。
(九州経済倶楽部幹事長 正木寿郎)