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2008年09月30日

Interview 中村学園大学客員教授 坂田 利家氏3

積極的支援の指導への対策新たな治療法の確立が課題

―この制度で本当に生活習慣病の患者は減ると思いますか?

坂田 この制度が軌道に乗れば、メタボリック症候群の予備軍といわれる人たちは動機付け支援の指導だけである程度の成果は上がると思います。問題はそれだけでは不成功に終わった群、つまり積極的支援の指導が必要な人たちです。この人たちは動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞などを経て、一生医療と縁が切れなくなる可能性のある人たちなので要注意です。


―積極的支援を必要とする人たちへの対処法は?

坂田 これがなかなか難しい。実際、最初からエネルギー計算などをさせたら、皆さん脱落してしまうでしょう。そういう手立てを最も疎ましいと感じる人たちが患っているわけですから。メタボの原因が飲み過ぎ、食べ過ぎ、そして運動不足からきているということは誰でもわかっているはずです。問題は『頭ではわかっていても実行できない』こと。どんなに『食べ過ぎてはいけない』と言葉で指導・説得しても効果は一時的で、大抵の人がリバウンドしてしまうのです。


―言葉での指導・説得では解決にはなりませんか?

坂田 解決できる人たちは健常者、ないしはそれに近い方々です。私もこれまで長いこといろいろな肥満症の治療をやってきました。患者にいくら生活習慣の改善が必要かを説いても、入院中一時的な改善効果が上がるだけで、退院するとさらに悪化させて戻ってきます。そんなことが続き、「治療法そのものを変えないとダメだ」と、そう思うようになりました。その結果の集積が、現在行っている感覚に訴える方法になったのです。


―感覚に訴える治療法とは何なのでしょう?

坂田 具体的には、グラフ体重日記、咀嚼法、日本食化低エネルギー療法などです。すでに成書などで発表していますから、詳しくはそれをご覧下さい。ただし、これらの治療法は頭で理解することと実践してみるのとではまったく異なります。名プレーヤーになるには反復練習が必須なのです。

2008年09月29日

Interview 中村学園大学客員教授 坂田 利家氏2

日本人の健康管理は不十分将来への意識改革が必要

―一般の日本人の健康管理のあり方について?

坂田教授 まず欧米人は体が大きく、強健なのですが、それと反対に老化のスピード、度合いともに非常に激しい。これは遺伝子によるもので、そのため老化の進行を食い止めようとあらゆる努力を惜しみません。また個それぞれが独立していますので、頼りになるのは自分しかいないため、老後は特に自分の健康管理に積極的にお金を投資します。
 一方日本人は、欧米人に比べて老化の進行が遅く緩やかです。また老後は核家族が増えたとはいっても、社会システムとして家族の関係が密で、依存しあっていますので、自己の健康管理への投資も極めて消極的です。長寿といわれていますが、とくに老後の健康管理に対する自覚が不十分です。


―日本人の長寿というのは、世界的に評価されていると思いますが。

坂田 現在では、長寿も然ることながら、老後寝付いて死を迎えるまでの時間を限りなく短くすること、これが最大の関心事です。表現は少々荒っぽいかもしれませんが、できればポックリ逝くように努力すべきです。実際、厚労省は、医療政策をそういう方向に切り替えています。


―今回の「特定健診・特定保健指導」制度導入と関係がありますか?

坂田 もちろん厚労省としては、この制度を導入することで生活習慣病でもたらされる多くの病気を事前に予防し、全体として医療費を抑制したいと思っています。確かにこの制度の導入によって、多くの人が早いうちから自己の健康管理に投資する、そのきっかけになったとしたら意味は大いにあります。

2008年09月26日

Interview 中村学園大学客員教授 坂田 利家氏1

メタボ制度導入を機に個人も企業も健康管理に対する意識の転換を図るべき

 メタボ制度の導入後、有効なメタボ対策についての情報が、医療側からあまり聞こえてこない。そこで、医療従事者として、肥満症治療の研究で知られる中村学園大学客員教授の坂田利家氏に、その対策と課題、さらには個人並びに企業の健康管理への対応についての問題点などを伺った。

中村学園大学客員教授 坂田 利家中村学園大学客員教授
坂田 利家●さかた・としいえ
1936年生まれ。71歳。九州大学医学部卒。大分医科大学名誉教授。2002年から中村学園大学栄養科学部教授。08年4 月から同大客員教授。食欲の中枢と肥満の関係を長年に亘って研究。

2008年09月25日

4月から新制度スタート、特定健診・特定保健指導企業はどう取り組む?5

保健指導が必要と判断される基準とメタボリックシンドロームとは?

2008年09月24日

4月から新制度スタート、特定健診・特定保健指導企業はどう取り組む?4

■広がるメタボ市場

 企業にとっては負担でもあるメタボ健診だが、健康市場においては、健診・保健指導あわせて最大2800億円(日本政策投資銀行の試算)の市場が見込まれるとも言われている。受診の義務化による新たな健診の需要増に加え、実施に際しての実務処理や、保健指導に関する商品・サービスなど、メタボ健診に関わる市場が新たに創出されると考えられる。さらに、メタボ健診により個人の健康への関心がより高まり、健康食品や健康器具メーカー、通信関係やゲーム関係企業も拡大が見込まれ、期待が集まっている。
 スタートしたばかりのメタボ健診。医療機関や自治体、健保組合のみならず、さまざまな企業・業界がその動向を伺っている。

2008年09月22日

4月から新制度スタート、特定健診・特定保健指導企業はどう取り組む?3

■保健指導の内容は?

 メタボ健診では、腹囲、血圧、血糖値、コレステロール値の4項目を検査し、複数のリスクをもつ受診者に対して、医師や保健師、管理栄養士などによる「特定保健指導」が行われることになる。比較的リスクの軽い受診者=メタボ予備軍には「動機付け支援」として面談による支援を、完全にメタボと診断された受診者には「積極的支援」として、3カ月以上の長期にわたり、生活習慣を改善するための指導が行われる。 
 厚生労働省が今年発表した国民健康・栄養調査では、健診対象者約5600万人のうち男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボまたはその予備軍に当てはまり、合計約1900万人に上ると推計されている。今回のメタボ健診と保健指導により、2015年度までに生活習慣病とその予備軍を25%減少させるのが目標で、これにより25年度には医療費を2兆円削減できるとしている。

2008年09月19日

4月から新制度スタート、特定健診・特定保健指導企業はどう取り組む?2

健康保険加入者に義務付けられるメタボ健診改善状況によってぺナルティも
 この4月から始まったメタボ健診。これまでの健康診断とどう違うのか。また企業にはどう関わってくるのだろうか。

■メタボ健診とは?
 2006年、医療制度改革で生活習慣病対策が重視されるようになり、急速に市民権を得た言葉が「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」。中年男性を中心に、今や国民的な関心事となり、生活習慣病への危機意識も高まっている。 
 特定健康診査、通称メタボ健診は、40歳から74歳の健保・国保加入者全員を対象に、生活習慣病の要因となるこのメタボリックシンドロームに着目した、新しい健康診断の制度だ。これまでの健康診断は病気の人を見つけることが目的であったのに対し、メタボ健診では、„病気になりそうな人“を早期に見つけ、医療関係者などが介入することによって病気を未然に防ぐことが目的とされている。

2008年09月18日

4月から新制度スタート、特定健診・特定保健指導企業はどう取り組む?1

メタボリックのお腹の写真 この4月から、40歳から74歳までの全国民を対象に、「特定健康診査・特定保健指導制度」、通称「メタボ健診」がスタートした。これまで、個人に委ねられてきたメタボリックシンドロームや生活習慣病の改善がいわば義務化されることになり、対策に乗り出す企業や自治体も増えてきた。メタボ健診とは何か、そしてそれを取り巻く状況を取材した。

2008年09月17日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ11

頭脳を持ったカーアイランドへ

 1980年代、九州は相次ぐ半導体産業の導入で「シリコンアイランド」といわれた。しかし進出してきたのは工場だけで、研究開発機能は中央の本社にあり、「頭脳なきシリコンアイランド」とも揶揄(やゆ)されたのも事実。
 
 しかし自動車産業の場合、単なる加工工場で終わりそうにはない。次世代カーや新しいエンジンの開発は、関東や東海の本社で行われ、九州に来る可能性は少ないが、生産工場の改善・工夫から設備や治工具、車体デザインの開発など地元でできることなら、地元でやってほしいというのが自動車メーカーの本音のようだ。最近は、自動車づくりの「頭脳」ともいえる設計・開発拠点の新設の動きが目立つ。
 
 トヨタ自動車の生産準備支援の子会社である「ビーピーエー」(福岡市)と「エムティエィ」(名古屋市)は昨年4月に合併して、「トヨタプロダクションエンジニアリング」としてスタートした。同社はコンピューターを利用した設計生産技術システムCAD・CAMなどを使って、設計部門と生産部門をつなぐ役割を果たし、インターネットでデータを送る。宗像市の技術センターにエンジニアを置き、トヨタの本社や中国の工場とインターネットでやり取りをしている。設計エンジニア部門も人材を求めて次第に九州にシフトしている。
 
 日産車体の子会社でソフト開発の「エヌシーエス」(平塚市)は今年4月1日、福岡市博多区に「九州オフィス」を開設した。九州オフィスは、共同で開発に当たる地場企業の技術者を合わせて8人でスタート。将来は20~30人に拡充するという。同社としては神奈川県外では初の開発拠点となる。自動車のほか、電機やコンピューターなど生産分野もカバーする。さらにトヨタ自動車九州は、宮田工場の敷地内に自動車の設計・開発拠点を新設することを決めた。2010年代半ばの事業開始を目指すが、すでに採用活動を始めており、最終的にはトヨタ自動車本体からの出向者を含め、約200人体制を整える方針だ。トヨタが九州に設計・開発部門を設置するのは初めてのことだ。
 
 さらにダイハツ九州も2010年4月に、福岡市西区の九州大学伊都キャンパスの隣接地に、設計・開発を担う「開発センター」(仮称)を開設する。車両上部のアッパーボデーと呼ばれる部分を設計するほか、設計評価や試作なども行う。これによりダイハツは九州で開発から生産までの一貫体制が整うことになる。

2008年09月16日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ10

部品メーカーに「系列」はない

 東海地域のトヨタに代表されるように、自動車メーカーは本社機能のある地域で部品メーカーと「城下町」ともいえる強固な地盤を築いてきたが、九州では、自動車産業の集積が遅れた分、系列意識は強くない。
 
 福岡県小竹町でプラスチック部品を製造する三泉化成九州工場の樹脂製品の出荷先は1社に限らない。例えばバンパーはダイハツ九州に、バックドアやフロントドアの内装部品はマツダの防府工場(山口県防府市)だ。もともと九州に進出した日産自動車の九州工場と取引していた。1990年代後半に型締め力1000トン超の大型設備を導入。トヨタ自動車九州の宮田工場で生産する高級車「レクサス」などに用いる木目調特殊塗装の専用工場を新設するなど、大型投資を続けた結果、メーカーの壁を越え注文が殺到している。
 
 2001年に九州に進出した大手プレス・東プレの生産子会社、東プレ九州は九州での本拠地を久留米市に置いた。取引の大半を占めていた日産九州工場のある苅田町や、トヨタ九州工場の宮若市も検討したが、日産、トヨタ、熊本で二輪車を生産するホンダとすべて2時間以内で部品を運べる久留米市に決めた。04年に九州に進出したダイハツとも取引を開始。今も取引の7割程度は日産向けだが、同じ工場ではトヨタのレクサスの車体部品も生産している。

2008年09月12日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ9

やる気を見せる地場中小企業も

自動車産業への参入が期待される地場企業 経済産業省はサポーティング・インダストリー法(中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律)に基づき、新技術に挑戦する中小企業の低利融資や特許料の減免などの支援措置をしているが、九州全体では24件が認定されている。そのうち自動車関連産業が17件と圧倒的に多い。ちなみに情報家電産業は6件、次いで半導体2件の順である。
 
 今年4月、新たに認定された5件のうち4件が自動車関連だ。4件の内訳は、富士岐工産(北九州市)が溶射の基盤技術、オタライト(春日市)が粉末冶金、ミクロエース(宮崎市)がめっき、戸畑ターレット工作所(北九州市)が鍛造の基盤技術の研究開発に取り組んでいる。
 
 情報家電産業の分野から主力を自動車関連に移す企業も少なくない。CAD・CAM(コンピューターによる設計・製造)ソフトのシステム受託開発を手掛けるベンチャー、エーエスエー(北九州市)は、昨年、社運を懸けた新システムの開発にこぎ着けた。微細な凹凸を感知するセンサーを研磨ロボットに搭載した精密金型研磨用のロボットシステムで、熟練工の手作業と同水準の1000分の1ミリ単位の研磨加工が可能だ。特に高い精度と品質が求められる自動車部品金型の製作に威力を発揮する。
 
 エーエスシーがこのシステムの開発に乗り出したのは2003年。当時は主力の情報関連企業向けシステム開発が先細りしつつあり、自動車関連事業に活路を求めた。このシステム開発に投じた資金は1億4000万円。売上高5億円の同社にとっては大きな賭けだったが、今では1次部品メーカーに納入するまでになった。

2008年09月11日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階 へ8

地元調達率70%を達成するには

 地元調達率を高めるためには、高い技術力を持つ部品メーカーの集積を図ることが必要で、大学などの研究機関と連携した人材育成・技術支援が不可欠だ。
 
 「自動車産業を支える中核的人材の育成」を掲げる福岡県では、「産学官連携による人づくり」を打ち出している。福岡県内に数多くある大学や工業系専門学校、工業系高校などの強みを生かし、産学官連携による取り組みで自動車産業を支える人材の育成を図っている。
 
 その一つが、九州工業大学の先端金型センターを中核とした自動車関連金型中核人材育成プログラムだ。このプログラムでは、3次元デジタル設計から先端加工まで対応できる生産現場の中核人材の育成に取り組んでいる。
 
 また県立工業高校への高度なCADプログラムの導入による高校生の技能育成、工業高校などを対象にした大規模なインターンシップの実施、福岡県若年者仕事サポートセンターによるモノづくり人材育成を手掛けている。さらに大手自動車メーカーOBらを地場企業へ派遣していくことによる生産管理体制の改善支援にも力を入れている。
 
 その一方で、企業独自の取り組みとしては、系列を越えた部品メーカーによる企業連携合体である「リングフロム九州」や地場の中堅・中小企業による共同受注・開発グループである「ガマダス」などの取り組みもある

2008年09月10日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階 へ7

北部九州自動車150万台精算拠点推進構想(目標年次:平成21年度)

2008年09月09日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階 へ6

九州の部品メーカーは808社

 九州の部品メーカーは現在808社。内訳は1次メーカー(完成車メーカーと共同開発・調達窓口あり)が50社、2次・3次メーカー(1次メーカーと共同開発・生産管理技術)が401社、残りの348社が金型やプレス加工、鋳鍛造、表面処理などの中小企業である。
 
 各メーカー別に部品調達を見てみると、トヨタ九州では、九州で生産する車種に必要な部品を域内から調達するように取り組んでいる。系列の1次メーカーの九州進出に加え、「九州で出来るものは九州で」と部品メーカーとの技術提携による地場企業の育成を路線として打ち出している。しかし現実は厳しい。トヨタ九州苅田エンジン工場の立ち上げ時で、九州内調達は300〜400点のうち2点にすぎなかったという。
 
 「北部九州自動車150万台生産拠点プロジェクト」では「地元調達率70%」を目標のひとつに掲げているが、自動車メーカーが生産管理の3要素として重視しているQCD(品質、コスト、納期)で、世界的な競争力を自動車メーカーが求めるレベルに、地場企業がどうやって到達するかが課題だ。
 
 品質のPPM(パーセント・パー・ミリオン)管理は、100万個製作して不良品が数個以下。生産過程は不良品がないという前提で動いているため、不良品がそれ以上になるとリコールされる。地元の半導体メーカーでも経験したことがない、まさに文化の違う世界である。そして、ケタ外れの量を生産して、1分以内に1台が出来上がる工場に、ジャスト・イン・タイムで確実に納めなければならない。その上に粗利益率も低い。初めから自動車産業への参入を、あきらめている地場中小企業も少なくない。

2008年09月08日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ5

九州における部品調達の現状

 日本の自動車生産システムでは、完成車を手掛ける自動車メーカーを頂点として、その傘下には1次・2次メーカーといわれる各種の自動車部品メーカーが連なり、さらにその下には数多くの中小企業が組織される。いわばピラミッド型の生産分業体制だ。
 
 一般的に自動車は、2〜3万点にも及ぶさまざまな部品から構成されている。このような自動車部品の生産について、自動車メーカーではエンジン生産や車体パネルなどの基幹となる部品生産や最終的な組み立てを手掛ける。その自動車メーカー自体で生産している部品は自動車全体の約3割で、残り7割は各部品メーカーに頼っている。自動車メーカーが生産地域内の部品メーカーから調達している割合を示す域内調達率についてみると、自動車の先進地域である関東、東海では8割にも達している。これに対して九州に生産拠点を構える自動車メーカーの場合、総じて5割前後にすぎない。
 
 九州内に生産拠点を構える自動車メーカーが域内で調達している部品は、シートやマフラー、ラジエーター、エアコンなど、重量のある部品や軽量でもかさばる部品が多い。一方、自動車メーカーが域外(主に関東、東海)から調達している部品は、電装品をはじめ駆動・懸架系部品、エンジン部品などの高機能な部品が多い。

2008年09月05日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ4

なぜ一大生産拠点になったのか

 九州が、世界的な自動車の生産拠点になった要因は、人材供給をはじめとするヒト、工業団地をはじめ道路、港湾などのインフラ、自動車生産の基本となるモノづくり文化、そして進出を検討していた企業自身による経営判断にもとづくものと見ることができる。
 
 自動車産業は、多くの人手を必要とする労働集約型の業態である。トヨタの本拠地の愛知県などでは、求人数が求職者数を大きく上回る、いわゆる「人手不足」の状況にある。これに対し北部九州は、労働力に余裕があり、特に若い働き手を確保しやすい地域。このことが、自動車メーカーが新たな進出地を選ぶ上で大きな要因になった。
 
 福岡県を例にとると、32の大学があり、そのうち理工系学部を有する大学は13にのぼり、理工系の国立大学生数は東京に次いで全国2位だ。また、福岡県内には3つの国立工業専門学校、23の工業系高校があり、毎年多くの若い人材を供給することが可能だ。
 
 東海地方を本拠地とするトヨタ自動車の場合、全従業員の2割から3割が九州出身者で占められているといわれる。事実、トヨタが91年秋、トヨタ九州への転籍希望者を募ったところ、2200人の九州出身者が応じた。この中から選ばれた約700人が赴任、宮田工場の生産を立ち上げていく上で大きな戦力になったという。
 
 歴史的にみても北部九州には鉄鋼に始まるモノづくり文化があったことも大きい。日産自動車のルーツも九州だった。日産コンツェルンを築いた鮎川義介が北九州に創業した戸畑鋳物(現日立金属)が1933年、ダット自動車を吸収、その後、日本産業との共同出資で自動車製造という会社を設立、翌年に日産自動車と改称した。いわば日産の北部九州進出は「里帰り」ともいえるだろう。
 
 もともと4大工業地帯のひとつだった北九州には独自の技術をもとに業界のトップシェアを持つ企業も多い。自動車産業でも多数採用されている産業用ロボットの大手メーカーである安川電機、住宅設備機器のT0T0などが本社工場を構えており、このような大手メーカーとの取引関係を通じて、独自の技術を培ってきた中小企業が数多く存在することの意味も大きい。

2008年09月04日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ3

第3次自動車ブームまでの経緯

 いま自動車工場および関連工場の進出・増設ラッシュに沸く九州は、1976年の日産の九州進出による第1次自動車産業ブーム、1992年のトヨタ九州の宮田工場操業による第2次自動車産業ブームにつづく、第3次自動車産業ブームの真っただ中だといっていいだろう。
 
 第3次自動車産業の発端となったのは2004年11月、ダイハツ工業グループのダイハツ九州(旧ダイハツ車体)が群馬県前橋市から福岡県に隣接する大分県中津市への全面移転だった。当初12万台の生産能力で立ち上げ、その後矢継ぎ早に増強して、2006年23万台を生産した。昨年11月には第2工場が稼働して年産46万台体制になった。
 
 一方、2005年9月にはトヨタ九州の第2工場が完成、トヨタの最高級ブランド車「レクサス」の生産を始めた。同年12月には、トヨタグループとしては愛知県外では国内初となるエンジン工場を苅田町に完成、宮田工場向けのエンジンの生産が始まった。やがてトヨタ九州での好調な車両生産を受けて、エンジン工場の生産能力を44万基と倍増させた。
 
 一方、日産グループも日産車体が、日産九州工場内に新工場を建設、2009年初旬には操業する。これで日産グループの九州における生産能力は65万台となり、日産グループの国内における生産能力の約4割を占める一大拠点となった。
 
 メーカー3社の完成車全体の約7割が輸出向けで、トヨタ九州は博多港から約9割、日産九州は苅田港から約8割、ダイハツ九州は2割強を輸出している。米国市場ではトヨタ九州のハイブリット車、日産九州の新型エクストレイル、ムラーノなどが好調だ。

2008年09月03日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ2

北部九州に立地する自動車メーカーの概要

2008年09月02日

08年度内にも年間生産台数150万台達成 設計・開発拠点の設置で新しい段階へ1

2020年には7兆円産業へ

 北部九州地域には、日産自動車九州工場(福岡県苅田町)、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)、ダイハツ九州(大分県中津市)の自動車メーカー工場が立地している。各メーカーは21世紀に入ってから生産を着実に伸ばし、自動車産業は今や九州を代表するリーディング産業になった。
 
 福岡県は北部九州を関東、東海地域に次ぐ自動車産業の一大拠点とするために、2003年2月、麻生知事を会長に官民一体となった「北部九州自動車100万台生産拠点推進会議」を設置、年産100万台の実現に向けた積極的取り組みを行ってきたが、3年後の2006年に第1目標の年産100万台を突破した。そのため推進組織の名称を「北部九州自動車150万台生産拠点推進会議」(会員数470団体・企業)に改め、「生産台数150万台」「地元調達率70%」「アジアの最先端拠点」「次世代のクルマ開発拠点」の4つの目標を掲げ、目標年次を2009年度に設定した。
 
 現在の完成車の年間生産台数は、日産車53万台、トヨタ車43万台、ダイハツ46万台だが、12万台体制の日産車体九州(苅田町)が2009年初旬に操業を開始すれば、目標年次を1年前倒しして2008年度中に150万台を突破することが確実になってきた。次なる目標は現在50%しかない部品の調達率を70%まで高めることだ。
 
 経済産業省の工業統計表(2005年)によると、九州地域の自動車関連産業出荷額は約2・7兆円と九州全体の製造業工業出荷額約20兆円の約14%を占めている。九州経済産業局は、中国をはじめとしたBRICsなど海外の需給動向を踏まえて、2020年の九州地域の自動車関連産業の規模を6・4~7・6兆円と試算している。

2008年09月01日

九州全域が一丸となって取り組む「カーアイランド」づくり7

北部九州自動車生産の推移